ずっと見慣れていたはずの
女の顔が
急に
全く違う人物に見えた瞬間だった・・・・・
ここは都内のカフェ。
旧正月を祝う外国人が
大勢押しかけ
われさきと会話をいそぐ
そんな雑多なカフェだった。
目の前にいる女は
一応
付き合っていることになっている
俺の彼女。
結婚するでもない
一緒に住むでもない
そんな中途半端な関係が
もうかれこれ１年も続いていた。
俺にとって彼女は
友人の約束が入れば
そっちを優先させるような
そんな位置の人間だった。
声をかけてきたのは彼女の方。
職場の同僚だった。
こんな雑多なカフェに
大事な話がある
と、呼び出したのは俺。
俺にとっての彼女の存在が
どの程度のものなのか？は
今日のこの場所の選定だけとっても
十分わかるだろう。
俺が彼女を呼び出したのは
他でもない
この中途半端な付き合いに
いったんピリオドを・・・・
ということを
彼女に伝えるためだ。
いや
ここでかっこつけてもしょうがない。
本音を言おう。
あいつから声をかけてきたにもかかわらず
最近どうも態度が以前と違う。
何やら嬉しそうなのだ。
以前に比べて
幸せそうなのだ。
俺にはその理由が
さっぱりわからなかった。
何か？習い事をしているらしいことを
時々話していはいたけれども
そもそも彼女に
はなからそんなに興味のない俺。
彼女が話していた内容など
すっかり記憶から
抜け落ちていた。
けどなんなんだ？
この彼女の
満たされているような表情は？
本当は他に男でも
できたんじゃないだろうか？
どうでもいいはずの彼女が
なんだか俺の中で
急に存在感を示すようになっていた・・・・・
こんな中途半端な関係を
ここで一旦白紙にしないか？
という
俺からの提案のつもりだったが
別れるつもりなどない。
こうやって言うことで
俺にベタ惚れだった彼女は
そんなこと言わないで！
◯◯と一緒じゃなきゃ寂しくて無理！
あなたがいないとダメなの
そうやって
俺にしがみついた。
それで俺は
満足していたし
そうすることで
彼女をコントロールすることができた。
ところがどうだろう？
彼女が俺にしてきた返事は・・・・・・
あなたがそう思うなら仕方がないわね
しばらくそうしましょう
そうやって告げて来たではないかっ！！！！
＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊
もしかすると
俺の予想通り
他に男ができたのかもしれない。
いや
きっとそうなのか？
待て。
彼女がそんな人間じゃないのは
彼女と１年付き合ってきた俺が
一番よく知っている。
彼女が友人関係でもめた時
自分が感じている本音を
きちんと友人に打ち明けて
（それがどんなにネガティブな内容を伝えなければいけないことであっても！）
関係を改善しようとする
そんな真面目な側面を持った彼女だ。
そんなこいつが
俺に黙って
他の男に行くわけがない。
まてよ？
彼女がこんな風に
自分に少しずつ自信を持ち始めたのは
間違いない。
あの
なんとかという横文字の
習い事を始めてからだ！
いったいその習い事に
どんな秘密が隠されているというのかっ！
俺は
自分のそんな思考のモヤモヤで
グルグルしながらも
今、自分が言い放ってしまった
少し距離を置こう
これをどうやって
かっこ悪くなく撤回しなければならないのか
同時に２つのことを
考えなければならなくなった。
俺にそうやって言われて
ちょっぴり寂しそうな彼女なのに
その表情にはむしろ
俺の本音を聞いたことへの
清々しさと
これから立ち向かう必要がある
自分の寂しさの感情への
覚悟さえみられた。
あんなに弱くて
俺にべったりだった彼女が
なんだかどんどん俺から離れていき
独り立ちして行ってしまうのではないか・・・・
むしろ俺の方が
そんな不安を感じ始めていた。
さて
俺はこれから
どうやって彼女に言い訳しよう？
騒がしかった外国人の声は
もうすっかり俺の耳から遠ざかり
きりりとした彼女の
美しい眉の形だけが
俺の脳裏に強烈に焼きついた。
マッキー
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